第8章 白濁
課長が本気で言っているわけではないが、
冗談でもなさそうな口元の緩み。
「ありませんよ。
可愛い部下だとは思いますが、
それ以上でもそれ以下でもありません」
「そうなの?
角くん、来たときより随分変わってたからなあ」
「ファッションひとつで人は変わるように、
ヘアスタイルひとつでも前向きになれるんです。
その時俺も
いざこざは知りもしませんでしたが、
変わるキッカケを与えたのは
間違いなく俺です」
「というと?」
「転社してきた時から
長い前髪が気になってたんです。
社会人として如何なものかと注意して、
俺の行きつけの美容室を紹介したんですよ」
「なるほど。
若者のキミらしい教育方針だね」
課長との話が終わり、
湊はしばらく自宅謹慎だと言い渡された。