• テキストサイズ

落ちる。 【GIOGIO】【フーゴ】

第1章 落ちて


「・・・そうか。しょうがない」

男は私の肩を支えて、少し考えたような素振りを見せたが直ぐにこちらに向き直した。

「近くに仕事場がある。今は誰もいないから、そこで体を休めるんだ。明日の朝までに病院を手配してまた迎えに来よう。」

「そんな・・・結構です。私には何も出来ません。親切にしないで下さい」

それに病院なんて。私にはお金もない。
第一、今私は追われている。一般人であろうこの人まで一緒にいたらきっと狙われる。巻き込む訳には行かないのだ。

「君は怪我人なんだ。俺のわがままを聞くと思って、ついてくるんだ。」

もし今ここで彼に「私はギャングなんだ。」なんて言ったら、突き放すだろうか。私は悪霊に取り憑かれているのだ。
両親はそれを「幽波紋」と呼んでいたが、私は自分自身のその悪霊の恐ろしさを知っているから、人の前でそれを出したことは無かった。
両親にはよく、「あなたの幽波紋は健康な人間から栄養を奪うことだって、自分自身を生き返らせたりできる。あなたは無敵だ。私たちを守っておくれ。」と言われてきた。
そんな恐ろしいこと、私には出来ない。
私はよく知らないが、この、今目の前にいる男の栄養を吸い取って私自身に取り込むことだってできるのだろうか。
それを彼に伝えると、彼はどうするのだろうか。

「ありがとう。本当に、私なんかにこんなことしてくれてありがとう。」

足を引きずる私を支えながら、彼は私を「仕事場」まで連れて行ってくれた。

/ 53ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp