第3章 気付き
「お姉さん、お暇ですか?」
背後から声をかけられて、弾かれたように振り返ると、
首に鋭い痛みが走った。
体の力が無くなり、ベンチから崩れ落ちる。
ジェラートは無惨にも私の手から滑り落ちた。
視界が悪くなっていく中顔を上げると、かつて私を追っていた男が私を睨んでいた。
「最近見かけねぇと思ったら・・・呑気にジェラートかァ?」
死ぬ。
やっぱり出歩くんじゃあなかった。
意識が朦朧とする中、ぼんやりと、零れたジェラートを見つめた。
男は右手にスタンガンを握っていた。
私が振り返ったのが良かったのか、急所が外れたらしく、かろうじて意識もあったし、動くことも出来た。
「助けて・・・だれか・・・ッ」
涙も涎もとめどなく溢れてきて、意識を手放そうとした瞬間、肩を掴まれて無理やり起こされる。
死ぬんだ。
さようならみんな、さようならフーゴ・・・・!
「おい!しっかりしろ!!!!!」
私の肩を掴んで体を揺らしたのは、黒髪をサラサラ靡かせたブチャラティだった。
「ブチャラティ・・・・・」
無気力に名前を呼ぶことしか出来なくて、支えられた体にも未だ力は入らない。
ふわっと体が浮く感覚がして、私はジンジン痛む首の感覚をも手放した。