第3章 気付き
「僕達も帰りましょうか」
フーゴもかなり飲んでいたように感じるけど、あまり酔っているようには見えなかった。
私、寝たのに酔いが覚めてないなんて情けないな・・・。
エレベーターの独特の浮遊感に気分が悪くなる。
12階まであがるしばらくの時間で、思わず嘔吐してしまいそうになった。
やばい、やばいやばい。落ち着け、深呼吸深呼吸・・・・!
部屋まで我慢だ・・・!
私がフラフラしているのに気づいたのかフーゴは振り返って私を見ていた。
「気分が悪いですか?」
そう言って肩を支えてくれる。
「ごめん、ちょっとだけ・・・」
端にある私の部屋に行くまで、腰に手を当ててよろよろ歩く私の体を支えてくれた。
ちらっとフーゴの顔を覗いて見たら、彼の顔も赤く染っていた。
フーゴも酔ってるのかな?
そう思うと気分が良くなってきた。
でも添えられた手が暖かくて心地よくて、体を離したくなかった。
「送ってくれてありがとう。」
あっという間に部屋の前まで着いてしまって、少し名残惜しい。
あれだけワイワイしていたのがもうかなり前の事のように感じる。
「明日は休みですから、ゆっくり休んで下さいね」
「フーゴも休みなの?」
「はい、僕も休みです。」
少しだけ嬉しそうに話すフーゴ。ふんわりと微笑むのが、赤い頬と相まって幼く見えた。
なんだかいつもより無防備な感じがして胸がキュンキュンした。
「じゃあフーゴもゆっくり休んでね、結構飲んじゃったし_」
バイバイするのが寂しくて、ドアの前で彼を引き止めたくなる。
明日休みなら家で飲み直しを・・・とも考えたけど、私も(恐くフーゴも)もうそんな体力は無いし、また今度・・・。
「そうですね。僕も久しぶりに飲んだので・・・結構酔っちゃいました」
照れてるのかさらに顔を赤くしている。
可愛いなぁ・・・。
「帰って直ぐに寝ちゃうかもね。」
「多分そうですね。・・・それじゃ、おやすみなさい」
「おやすみなさい。」