第3章 気付き
気付けば目の前で取っ組み合いの喧嘩が始まってしまった。
「ちょ、2人とも、落ち着いて・・・」
「お前ッ!!!!!調子に乗るんじゃあねぇぞ、コラァ!!!!!」
声を荒らげてナランチャを放り投げて、肩を上下して呼吸している。
最早私の入る隙もなく、ただ見ることだけしかできない。
昨日の優しかったフーゴは何処へ。今目の前にいるフーゴは完全にプッツンしていて、正気を失っている。
でも何故かそんなフーゴに目を離せなかった。
私がじっと2人の喧嘩を見ていると後ろから誰かに肩に手を乗せられた。
「おいお前ら、久しぶりに会ったっつーのに相変わらずやってんなあ〜?」
後ろから来たのはミスタだった。私の肩に手を乗せたまま2人に声をかけている。
ひょいとナランチャの首根っこを掴んで喧嘩を辞めさせる。
私から見れば仲のいい三兄弟にしか見えなかった。
「・・・ナマエ、すみません。今日の仕事ですが・・・」
フーゴは乱れた服と呼吸を整えながら、あくまで平然と私に向き直した。
ナランチャはその後ろでミスタと何やら仲良さそうに話している。
「ねぇ、フーゴ。ナランチャも私たちの仲間なの?」
さっきミスタが言った、久しぶりに会った、という言葉に私は疑問が湧いていた。
「・・・まあ、そんなもんです。今は彼は 学校に通うようになったので一時的に組織を休んでいますが ジョルノがボスになる前は一緒のチームでした。」
だからそんなに親しかったのか。ナランチャとフーゴは一見仲が悪そうに見えるけど、きっと本当はすごく信頼しあっているんだろうなあ。
「そうなんだ・・・」
「あいつの事はいいんですよ。それと、さっきあいつが言ってたことは・・気にしないでください。」
女嫌いだって話・・・?
それは薄々感じていたけど、私とこんな風に仲良くしてくれるのは“仕事”だから、仕方ないよね。