第2章 ようこそ
家族写真。
幼い私と、父親と母親。3人が満面の笑みでこちらを向いている。
私が3歳の時の写真だった。
撮影したのは母の兄で、場所は遊園地。
写真を嫌う家族に私が無理を言って撮影させたんだ。
この時は知らないことばかりで、それが幸せだった。
他の家族と何ら変わりない、明るい家族・・・・。
涙が頬を伝った。
ピンと張った糸がプツリと切れたみたいに、堪えていた涙が溢れて止まらなかった。
「ナマエ?」
フーゴがこちらに向かってくる足音も気にせず、私はただ写真を見て泣いた。
写真に触れることも、近づくこともしなかったけれど、目をそらすことが出来なかった。
フーゴが私の視線を辿ってその写真を見つけた。
「っごめん・・・なさいっ・・・」
拭っても止まらなくて、目をゴシゴシこする。
目の前に立つフーゴが涙でぼやけて、でもこっちを見ているのがわかって、俯いてしまう。
フーゴは目を細めて私の両手首を掴んだ。
「擦らないで」
「・・・・っ」
フーゴに見つめられて、私も目を細めて見つめ返す。その間も涙がずっと頬に流れ出て、静かに落ちていく。
フーゴはゆっくり私の手を離して、自分の手で私の涙を拭った。
「・・・・・帰りましょう」
優しい声が私の鼓膜を揺らす。
鼻を啜って、ゆっくり頷いた。
フーゴは無気力に落ちた私の左手を不器用に握って部屋の外まで連れ出してくれた。