第2章 ようこそ
部屋にはキーボードのタイプ音だけが響く。
空腹が満たされて少し眠くなってきたけど、我慢して集中する。
その際も、フーゴのことが頭から離れない。
そういえば、私に優しくしてくれる男の人はお兄ちゃんだけだった。
ブチャラティに出会って、久しぶりに人間の温かみを感じて、それからは私に優しくしてくれる人ばかりで。
さっきミスタと話していた時のフーゴは、いつもみたいに優しくて穏やかなフーゴじゃあなくて、まるで幼なじみと話している時みたいなフーゴだった。
私もこれから親しくなって言ったらあんなふうに接してもらえるのかなあ、なんて考えてみる。
今までは執事だとか、紳士的だとか思っていたけど、だんだん弟みたいに思えてきて。
おかしくて、少し笑ってしまう。
このあとは両親が暮らしていた家に帰って、なにか残されているものがないかを探しに行く。
フーゴと一緒で心強く感じる一方、不安が大きくて、今の仕事が終わらなきゃいいのになんて思ってしまう。
行きたくないなー。
なんてワガママ言っちゃいけないけど。
家に帰りたくないなんて、馬鹿みたい。