第2章 ようこそ
ドアが開く音がしないから、私は気になって後ろを振り返ってみるとフーゴがドアの前で立ち止まってこちらを見ていた。
「?どうしたんですか・・・?」
「いや、その、僕にも敬語、使わなくて大丈夫ですから・・。」
「・・・え?」
なぜかバツが悪そうに目を逸らして、小さな声でそう言った。
私は間抜けな声で聞き返してしまう。
「ミスタの言う通り、いつまでも硬いままだと気を使わせてしまうと思って・・・」
「そんなこと・・・フーゴだって敬語使ってくれますし」
「僕はいいんですよ。それより、これからずっと僕達と一緒に仕事をする訳ですから、遠慮とかはして欲しくないって・・・思ったので。」
だんだん力が抜けていくみたいにそう話すフーゴ。
なんだかそれが可愛く思えて、笑ってしまう。
「ありがとう。」
自然と出たそのお礼に、フーゴは目を上げてこっちを見る。
「そうだね。私たち、仲間だもんね、逆に気を使わせていたのは私の方だったかもしれない」
「!いえ、そんなことは・・・」
困ったように眉を下げた彼が焦ったように1歩踏み出した。
さっきミスタと話していた時とは別人みたいに気が弱くなったように感じる。さてはフーゴは女性が苦手なんだな。
「でも、そう思ってくれていて嬉しい、ありがとうフーゴ。この後もよろしくね。」
とりあえず私は今の仕事を片付けないと。
その言葉を聞いて安心したかのように少し微笑んで、フーゴは挨拶をして部屋を立ち去った。