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刹那

第2章 たった二人の兄妹


竹千代、名を家康と改め名乗っている男だ。
かつて、竹千代と呼ばれた頃に 織田家に人質としてやってきた。葵とはひとつ違いで、今はなき 今川に人質に出されるまで 共に過ごした。 懐かしい名前に 目を輝かせる妹姫に微笑んで 教えてやる。
「同盟を、今までのような仮のものではなく
確実なものとするためにこの城へくる。
お前が会うのは…8年ぶりか?」
「はい、そのくらいです。竹千代様のお話しは
お兄さまから 時折聞いておりましたが…会うのは本当に久しぶりだわ」
このやり取りを聞いていた秀吉は 首を傾げる。
「姫様は、徳川家康とお知り合いですか」
葵は頷くと
「えぇ。むかし昔…そなたがお兄さまに仕えるよりも前の話しよ。まだ、お父様もご健在でお兄さまが吉法師と呼ばれ…私がまだ 童女だった頃の。」
「左様でございましたか、何度か話したことがあるのですが なかなか天邪鬼な…猫のような男ですね」
「え?天邪鬼?猫?そなた、誰の話をしているの。竹千代様は、天真爛漫な方で…」
「葵」
二人の会話を黙って聞いていた信長が、葵の言葉を遮る。
「月日が経てば、人は変わる。あやつは あの頃のように決して幼い子供ではなく、一人の男で 一国の主だ。天真爛漫、無邪気 とはいかぬ。」
「そういうものですか…。」
少し考えるような仕草をした後、満面の笑みを浮かべて言った。
「何はともあれ、お会いできるのが楽しみだわ」
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