第2章 たった二人の兄妹
(あれは…竹千代様?その隣にいる御仁は…)
どこかに面影のある青年と、見覚えのない若武者。一体何者だろうか。
「姫、あの男が気になりますか」
「光秀か。気になるというか…見覚えがないのよ。私は、物覚えのよい方だと自負していたのだけれど…」
違ったのかしら?と首を傾げる美姫に、光秀は苦笑すると
「姫が見覚えがないのは、当たり前かと。あの男は奥州の伊達政宗、同盟相手ですが 城へ来るのは初めてですから。」
「そうなの?」
「はい」
秀吉よりも早く 信長に仕えていた光秀は、幼い頃から この姫を知っている。大変物覚えが良く、好奇心旺盛で 何より聡明であった。
信長に命じられ、教育を任された時 初めは本当に自分が教えることについてこられるのか
と心配だったが…その心配は無用だった。
自分に懐いてくれる姫は 自分の目にも可愛らしく移り、飲み込みがはやく 意欲があり、教える甲斐があった。
(早いものだ)
気がつけば、立派な姫へ成長していた。
信長の片腕として 働きながら、今でもよく側を任されるが 本当に素晴らしい姫だと思う。
立場は違えど、妹のように思って見守ってきた。
だからこそ、信長や光秀 、秀吉くらいしかいない所では思いっきり 好きなことをさせてやりたいと思うのだ。