第12章 それはずるい
「倉尾ー、行かねぇの? 」
日向くんを食堂に促しながら、黒尾くんが私に声をかけてくれる!
『あっ、行く! じゃあ、雪絵ちゃんかおりちゃん、あとでね! 』
「はいよ〜」
「楽しんでおいで♡」
2人は少しイタズラっぽい笑顔で、手を振って私を送り出してくれた。
日向くんは月島くんやリエーフくんと話してて。
木兎くんは赤葦くんの肩を組んで。
私は必然的に、黒尾くんと並んでこの団体の1番後ろを歩く。
「もう随分と仲良しですネ? 」
『あはは! 同い年だし、みんな良い子ばっかりだからねー! 』
「ホント、意外と喋れるヤツだよなあ。」
『黒尾くんもね? 見た目胡散臭いのにね? 』
「胡散臭くないデスーっ。紳士的だろ? 」
『どうかなー? 』
いつも通り話してる。
話せてくることを祈る。
ああでも、隣にいて話せることが、今までの何倍も嬉しく感じてしまう。
好きになるって、こういう気持ちだったなあ。
忘れかけてた感情。
久しぶりに思い出す。
『黒尾くん。マネージャー、誘ってくれてありがとう。』
「は? 」
『黒尾くんがあの時誘ってくれなかったら、こんなに素敵な友達出来なかったなあ! 』
本当に。
心底そう思う。
「あー...まあ。」
『ん? 何? 』
「いや...こちらこそデス。」
きっと、私が急にお礼を言ったから照れたのか。
黒尾くんは、頭をグシャッと撫でてきた。
『うわぁ! 』
大きくて温かい手。
『...黒尾くんって、こーゆーの、誰にでもするタイプでしょ。』
私がどんな気持ちかも知らないで。
どんなにドキドキしてるかも知らないで。
「...んなことねぇよ。」
『え? 』
どういう意味?
そう聞こうとしたところで、食堂について。
「あー腹減ったー! 」なんて言いながら、前にいる木兎くん達のところに行ってしまった。
えっ。
え?
どういう意味?