第13章 夏の終わり
疑問を抱えたけれど。
そんなことを思い出させる暇もなく、今日も練習は進む。
「ギョェー!!」
『やっちゃん!? 』
途中、やっちゃんのビブスぶちまけ事件があって、みんなで笑いながら片付けた。
やっちゃんは平謝りしてたから、これもみんなで笑いながら宥めた。
それも楽しい思い出。
私達も出来ることをやって。
みんなも少しずつ変わってきて。
1番違うなぁって感じるのは、やっぱり烏野だけど。
うちもリエーフくんのいる体制が、段々板に着いてきたなぁ。
なんて勝手に思う。
長く感じた合宿も、残り1日半。
夕方からは、今日も第3体育館で練習が始まる。
最初は木兎くんと赤葦くんと黒尾くんの3人だったけど。
月島くんが来て。
リエーフくんと日向くんが来て。
すっかり賑やかになった。
「あ、ちなみに。スパイカーと1対1の時は基本的に、相手の身体の正面じゃなくて、スパイカーの利き腕の正面でブロックするといいぞ。」
ここに来ると、私も勉強になる。
日向くんやリエーフくん、月島くんと一緒に『へー』なんて感心してしまった。
そんなこと、あの一瞬で考えながら動いてるんだ。
「僕ら、試合になったら敵同士ですよね。どうしてアドバイスまでしてくれるんですか? 」
確かに。
私なんてそんなに優しいワケじゃないし、教えないようにしちゃうかもしれない...なんて...。
黒尾くんが優しいとか言って1年生に疑われてるけど。
本当に優しいのにな、なんて。私は心の中でこっそり思う。
黒尾くんは、“ゴミ捨て場の決戦”を実現させたいのだと言う。
なんか、マネージャーに入る前、チラッと聞いたなぁ。
昔からの因縁なんだって。
黒尾くんは、監督のためにもやりたいと言うけど...。
なんだか、猫又先生への思い入れがあるように感じたけど。
先生のために、なの?
私は、陸上をやってたけど、単純に自分の記録が更新されていくのが楽しかったから。
先生のために、なんて思ったこと...無いわけじゃないけど、そこまで一生懸命になるほどでも無かった。
何か、私が知らない絆みたいなのがあるんだろうなぁ。
私は今年から入ったからわからないけど。
先生とは、3年も一緒に練習してきたんだもんなあ。