第11章 木陰に隠させて
付き合いたいのか。
そうじゃないのか。
「舞衣さん! 最初烏野っスか!? 」
『え、ちょっとまってね、えーと...』
リエーフくんに声をかけられ、慌てて対戦表を確認する。
「倉尾!! 」
『え? 』
突然呼ばれて、振り向いた。
ボールが飛んできて、スローモーションのようで。
ぶつかる。
そう思った瞬間、ムチみたいにしなやかな腕が目の前に。
バシッ!!
大きな音を立てて、勢いを弱めたボールは地面へ落ちる。
「っぶね〜...舞衣さん、大丈夫スか?」
『あぁ、うん大丈夫...ありがとう。』
「でも珍しいスね、舞衣さんがボール避けれないの! 普段はバシー!っと避けるじゃないですか! 」
『そう、かな? 』
わかる。
気持ちがどこか練習に向いてないのがわかる。
「わりぃ、大丈夫か? 」
『あ、うん、大丈夫。』
黒尾くんと芝山くんのレシーブ練習から飛んできたボール。
私のところまで、わざわざ黒尾くんが来てくれた。
「調子悪いんですカ? 午前は休むかァ? 」
私が浮ついてるのが、黒尾くんにまで伝わってしまう。
こんなんじゃダメだ。
なんのために、テスト頑張ったの。
なんのために、私はここにいるの。
両手の平を、バチンと両頬に打ち付ける。
「うぉっ!?」
「舞衣さん!? 」
『...ごめん、大丈夫。』
マネージャーとして、みんなが春高に行くのをサポートするために来たんだ。
愛だの恋だの、うつつを抜かしていられないんだ。
そう、自分に言い聞かせる。
『リエーフくん、最初烏野だよ。第1コート。その後は得点だから、終わったあと移動少し急ぎめで。』
「あっ、うっす、了解っス! 」
『黒尾くんもありがと。ちょっとボーッとしちゃっただけ。大丈夫だよ。』
「あ、おう...」
よし。よし。
私は私にできることを。
精一杯。