第11章 木陰に隠させて
いつもどおり、午前の練習・午後の練習が過ぎて。
あ、スイカの差し入れは美味しかったなあ。
研磨くんも珍しく大きいの1切れ食べてたし。
そしてまた、夕方の自主練。
「黒尾ー! 」
「えー...」
「まだなんも言ってねーよ! 」
木兎くんが黒尾くんを誘う声が聞こえて。
今日も第3体育館かな? なんて。
どうしよう、また行こうかな、でも...。
ここに遊びに来たんじゃない。恋愛しに来たんじゃない。
わかってはいるんだけど、どうしても、試合中や休憩中のかっこいい姿を見ると、“好き”の気持ちが湧いてしまう。
今日はやっくん達のレシーブ練習の手伝いに行こうかな...。
そう思って、木兎くんと黒尾くんに背を向けたんだけど、
「舞衣ー! 今日もボールあげてくれー! 」
体育館中に響くような大声で、木兎くんに呼ばれた。
『あっ、...うんっ、』
しまった。つい返事をしてしまった。
でもここで、木兎くんのように大声で断る勇気は私には無い。
仕方ない。
行こう。
昨日よりは少しだけ重い足取りで、木兎くんと、無理矢理肩を組まれて連行される黒尾くん、ついでに赤葦くんの後ろを歩いた。
第3体育館は、昨日と一緒で私たちだけ。
違うところは、リエーフくんと月島くんがいないところかな。
まぁ昨日も月島くんはすぐ帰ったんだけど。
昨日と同じように、何度かボールを投げて。
プレーに対し、掛け声をだす。
木兎くんの声と、黒尾くんの声と、赤葦くんの冷静な声が響く。
静かな夜の自主練。
「ヅッギイイイイイイ!!!!」
『!? 』
「なんだ!? 」
何、今の声!
どこかで聞いたことある...あ、烏野の山口くん?
何かあったのかと思って外を見るけど、もう暗くなってて人影はあまりわからない。
「まぁいいや! 次だぁ次! 舞衣! ボール上げて! 」
『あ、はあいっ。いきまーすっ! 』
ポーンと山なりに投げたボール。
あっという間に、木兎くんのスパイクと黒尾くんのブロックの所まで持っていかれる。
1対1でも凄い音だなぁ。
なんとなく、そんなことを思っていた。ら。
『...月島くん? 』
「お? 」
体育館の入口に、月島くんが来ていた。