第10章 夏合宿後半戦
「いや、俺は全然...」
顔が熱いのが自分でわかる。
どうしよう。
ぶつかったくらいで赤くなるなんて変。
好きだとバレちゃう。
バレたくない。
「倉尾は大丈夫かよ? 」
『なんにもないよ!! ただぶつかっただけだし! 』
「あー...まぁそうだな。」
私のドギマギとした感じが、黒尾くんに伝わらないように必死。
だけどそれが逆に2人の空気を変にしている気がする。
なんとなくわかる。
『あっ、じゃあ、私行くね。』
この雰囲気から脱したくて、会話を無理矢理終わらせて私は黒尾くんから離れながら言う。
今度はぶつからないように、気をつけて。
「おー。おやすみ。」
『おやすみっ』
まるで一緒に住んでるかのような、「おやすみ」の応酬。
そんなことにもドキドキしてしまう。
どうしよう。
いいにおいしたな。
あんなに近くなんて。
まるで抱き締めてくるような。
どうしよう。
ああっ、もう、
『どうしよう!! 』
「うわぁ!? 」
ガラリと扉を開けると、みんなビックリした顔で私を見た。
部屋にいたのは、かおりちゃんと雪絵ちゃん、そして潔ちゃん。
『あっ、ごめん...! 』
「はは、どうしたー? 」
お姉さんのようなかおりちゃんは、少し笑いながら私に話しかけてくれる。優しい。
『あの...さ、』
夏合宿前半で、こんなふうにみんなで寝る前に話したことを思い出す。
なんとも思ってないの? って、雪絵ちゃんの言葉。
今年で最後だし、って、かおりちゃんの言葉。
『...私、黒尾くんのこと好きなんだ。』
「......え? 」
『...どうしよう。』
「えええええ!!!! 」
驚いたかおりちゃんの声。
廊下に少し響いてたのがわかる。
目をまんまるく見開く、雪絵ちゃんと潔ちゃん。
そう。
好きなんだ。
どうしよう。