第1章 突然で偶然
「クロー! 」
「おひるたべよー。」
お昼休みになると、いつもの光景。
クラスの女の子が何人か、いつも黒尾くんに声をかけに来る。
「へいへい。夜久も呼んでくんね? 話ある。」
「いいよー! 夜久ー。」
やっくんは、黒尾くんとは違い1年の時も同じクラスだったから、よく知っている。見かければかなりの確率でどちらかが声をかけるし、進路とか諸々、お互いに少し踏み入ったような話もできる。
そういえば、“やっくん”と呼び始めたのも、多分私が最初...な気がする。
バレー部の、なんだっけ、リベロ? やってるらしいってのも知ってるし。
当然といえば当然だけど、黒尾くんよりやっくんとの方がよく話す。
「舞衣も一緒に食べる? 」
黒尾くんを取り巻く女の子集団のひとりが誘ってくれた。
『ううん、私あっちで食べるよ。』
あっち、と指さした方には、私が1年の頃から仲のいい友達が待ってる。
それを彼女たちも察したようだ。
「あ、そー? おっけー。」
「え、舞衣来ないのー? 」
『うん、ごめんねー。またこんど! 』
「またねー。」
「夜久連れてきたよー。」
賑やかな黒尾くんの周りと黒尾くんに手を振って。
やっくんと、「おつかれー」なんて、すれ違う時に一言かけ合って。
私は、いつものご飯の席に向かった。