第1章 突然で偶然
というのが、ここ最近の話。
うちの学校は、名簿ではなく受験に受かった時の受験番号の順番を学籍番号として、学籍番号の順番でテストや諸々の管理がされる。
どうやら私は、このクラスだと学籍番号が黒尾くんの後ろらしい。
3年生になると模試が多くて、席替えをすると番号がばらばらになって大変なので、席替えをしないクラスが殆どだ。私たちのクラスもつい先日、席替えは1年間無しの方針が固まった。
つまり、黒尾くんとは1年間前後の席。
最後の1年、背の高い黒尾くんの後ろにいれるのは、悪くないな。
私たちの関係は、「私が一方的に見ている相手」から、「挨拶とたまに雑談をするクラスメイト」に少し昇格した。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが学校中に響く。
「というわけで、明日までに提出するように。」
先生がチャイムと同時にホームルームを締めて、バタバタと皆が動き出した。
あっ、全然話聞いてなかった。
皆が動き出すのに乗じていそいそと片付けを始める黒尾くんの背中を、トントンと叩いた。
「ん? 」
すぐに振り向いてくれる黒尾くん。
『ねぇ、ごめん、話聞いてなかった。この紙提出? 』
「んぁ? あー、そうそう。進路希望だってよ。」
『ふーん...。』
「倉尾さんってさ、真面目そうな顔して、意外とぼーっとしてるよな。結構話聞いてないし。」
『ごめんってー。黒尾くんが見た目の割に真面目に話聞いてくれてて、助かってるよ。』
「ボクはマジメデスヨ。」
『うそ。』
「はは。」
同じクラスになって前後の席になって。
ただ見ていただけではわからなかった彼を知るようになった。
まず、要領がいいこと。これはイメージ通りといえばイメージ通り。飄々と、大体のことはやってのける。
そして、想像よりは真面目。
まあ根っから真面目な人と比べれば十分チャラついてるけど。挨拶は「ウェーイ」だし。
バレーボールに関しては特に、大真面目。バレーの話が始まると、止まらない。
一応加減してくれているらしいけど、バレーボールに興味がなかった私にはサッパリの内容も多い。
あとは...あぁ、幼馴染の研磨くんがいること。金髪の2年生。黒尾くん程ではないけど、あの髪の色はやっぱり目立つから、話を聞いた時『あの子か。』とすぐにわかった。
そして...意外では無いかもしれないけど。女の子が周りに多いこと。
