第9章 テストは学生の宿命であり宿敵
「皆勤賞って、何の教科が? 」
優しく聞いてくる黒尾くんの優しさが今は痛い。
『...数学か英語、どっちか1つは必ず...下手したら両方...。』
引き攣らないで。その表情。
やっくん、目を見開かないで。
「おいおい! バレー部最大の危機じゃねえか! 」
『やっくんうるさい! あーーもーー』
「倉尾? 頑張ろうな? 」
『...いえっさー...』
海こわっ! こっっわい!
顔から火が出るほど恥ずかしい。
「...取り敢えずやるか。」
『黒尾くんせめて何か言って...。』
黒尾くんに引かれてる...恥ずかしい...。
私は自分でもわかるほど火照った顔に、ペチンと両手を打ち付けて。
よし。
やってやる。
薄いピンクのシャーペンを持って、問題集と向き合う。
やってやる。
行くぞ合宿。
投げ出したくなる問題文を、なんとか頭に入れて。
ノートを見ながら、取り敢えず解答の仕方を覚えて。
なんでこうしたら解けるのかわからないところは、黒尾くん...もとい黒尾先生に質問する。
研磨くんへの対応が保護者並みだから、面倒見の良さは薄々感じてたけど。
教えるのが上手い。
改めて、世話上手だと実感する。
『黒尾先生ー...』
「はいよ。」
『英語のここわかんないです...。』
「んー? 」
『なんでイが正解なの? アとウとオがダメな理由がわかんない。』
「これか。」
『うん。』
「これは、まずアは動名詞だから...」
顔を寄せあって照れてる場合じゃない。
少しでも点が上がるなら、むしろ積極的に寄っていく。
私たちは合宿に行くんだ。みんなで。
春高に連れてってくれると、3人は私に言った。
なら私は、春高まで全力でサポートをしなきゃいけない。
こんな所でつまづけない。
勉強なんかで立ち止まっていられないんだ。
この日から私達は、放課後は体育館ではなく図書館に行くのが日課になった。