第9章 テストは学生の宿命であり宿敵
「夜久の声、廊下まで聞こえてるぞ。」
そこに更に、海までやってくる。
「はよーっす。大集合かよ。」
『おはよー。』
私は2人に挨拶をしたけど、頭は正直それどころではない。
期末テスト範囲表と書かれた紙を必死に見る。
選択科目の関係もあって、私が今回受けなきゃいけないのは、国語・数学IIB・生物基礎・化学基礎・日本史・世界史・政治経済・英語のリーディングとライティング...。
テスト予定の時間割にマーカーを引きながら、頭がクラクラしてきた。
「どうした? 朝から大声出して。」
「いやだから、大声出してんのは俺じゃねーよ。倉尾がテスト忘れてたんだって。」
「「は? 」」
やっくんが私の恥ずかしい事情を2人に勝手にバラしてることなんて、頭に入ってこないくらい。
「...倉尾、大丈夫? 」
『海ー...』
泣きそうになりながら海の方を見た時、菩薩顔の海を見てピンと閃いた?
『海!! 』
「え、何?」
『数学得意だったよね!? 教えてください!! 』
思い出した。
海は1年生の時、委員会の前に私に数学を教えてくれたことがあった。
「いやー...実は俺も、今回の範囲あんまり得意じゃなくてさ...教えられる自信があるかと言われると...」
海が言葉を濁す時は大体ダメな時だ。
「倉尾は、何がダメそうなの? 」
やんわりと話題を逸らした海に聞かれる。
『暗記系は得意だから、理科系と社会系はいける...』
「お前日本史と世界史取ってんのかよ。鬼だな。」
私がマーカーを引いた時間割を見て、やっくんは引いた顔をする。
『辛うじて得意な方だから...。そっちは多分大丈夫。国語も得意だから何とか...。』
「すげーな。」
『ただ...』
「ただ? 」
『数学と英語は無理......。』
本当に。
本当に出来ないんだ、このふたつだけは。
自慢じゃないけど英語は下から10番以内に入ったことがある。
数学も公式を覚えても使いこなせない。
私の絶望的な顔に、後光が差すような顔で海がお告げをくれた。
「...なら、黒尾に教わればいいんじゃないか? 」