第7章 カレーに煮詰めた想い
「...クロ。オレ、部屋戻る。」
「んぁ? もーちょっとで風呂だぞ。」
「このゲーム飽きてきたから、他のにする。」
「飽きたって...そりゃおまえ、かれこれ1ヶ月、そればっかやってたからだろ...」
「ついでに風呂の道具も用意するから。時間になったら呼んで。」
「おー。りょーかい。」
そう言うと、研磨くんは猫背のままのそのそと席を立つ。
そして、
「大丈夫だから。また明日。」
私にそう言った。
やっぱり、なんとなく読まれてたんだ。
そう思ってしまった。
「あ、ご飯美味しかったよ。ありがと、舞衣。」
『えっ。』
私の驚きを置き去りにして。
オヤスミ、と言い残して出口に向かう研磨くん。
え?
名前で呼ばれた。
うわ。
ちょっと驚いた。
でも、話しかけづらかった研磨くんが、とうとう名前で呼んでくれるようになった。
その事実は、なんだか嬉しい。
研磨くんの“大丈夫”は、不思議だ。
いつも、両極端の判断しかしない研磨くんが、大丈夫だと言ってくれた。
まさか、これで私が安心することや少し気分が上がったことも、全部研磨くんの計算のうち?
なんて考えると少し怖いからやめとこ。
私は少しだけ軽くなった足取りで、もう一度お皿洗いの手伝いに向かった。