第7章 カレーに煮詰めた想い
「はー、うまかったー。」
『ふふ、よかったでーす。』
黒尾くんから、おいしかったと褒めてもらって。
食器洗いは交代制。
私と仁花ちゃんで4分の1を終わらせ、今は真子ちゃんと雪絵ちゃんが洗ってくれている。
今日の仕事はこれでおしまい。
私と仁花ちゃんは、まだ食堂で座っている音駒や烏野の所へ向かった。
黒尾くんはだらりと椅子に腰掛けてるし、研磨くんは相変わらずゲームをしている。
『お風呂、もう少ししたら音駒の時間だから。みんなで入ってね? 』
「おー。あと20分くらい? 」
『んー、そうだね。』
「りょーかいー。」
合宿施設のお風呂は、まるで温泉みたいだ。
さすがは梟谷グループの1つ。
「そういえば今更だけど、そっちも3年全員残ったんだな。」
「あぁ。」
澤村くんと黒尾くんが、話を始める。
なんだかんだ仲良いのか。
まあ、同じ主将どうし。通じるところも多いのかもしれない。
私は研磨くんのゲームが少し気になって。
『何やってるの?』と覗き込んだら、なんだか丁寧に教えて貰えた。
この敵を倒すゲームで、今はこうなってて...みたいな。
自分でやるのは嫌いだけど、人がゲームをしてるのを見るのは好きだ。
特に研磨くんは素人目にも凄腕。
画面がチカチカと光り、攻撃を避けながら大きな技を出してどんどん敵のゲージが下がっていくのは、傍から見てもすこし快感だった。
夢中になって覗き込んでいたところに、「勝ち残んなきゃ意味ねえよ」と黒尾くんの声が急に響く。
どこか“入って”いなかった、インターハイ予選後の練習。
その言葉は、なんだか酷く重かったし、練習になかなか“入って”いけなかった理由を物語っていた様だった。
みんなが頑張ったのは事実じゃない。
それでもやっぱり、勝たなきゃ意味が無い世界なのか。
でも、頑張ったことを無下にするような。
意味が無い、なんて.....
「大丈夫? 」
『え!? 』
声をかけてくれたのは、研磨くんだった。
『あ、ごめん...ちょっとぼーっとしてて...。』
「ふーん...」
猫のように丸くて大きい目。
今、ぼーっとなんかしてなかったことも。
そんな事言わないで、なんて思ってしまったことも。
何もかも見透かされそうな目。