第7章 カレーに煮詰めた想い
「ご飯の準備しよっか! 」
かおりちゃんの声で、私たちは食堂に入って。
「お待たせ〜並んでいいよ〜」
雪絵ちゃんのふわふわした声で、食堂で待ちぼうけをくらってた部員たちはぞろぞろと並び始める。
1列になったみんなに、出来上がったご飯を渡していく。
ご飯を盛るのは潔ちゃん。カレーを盛るのは私。
イワシを盛るのは仁花ちゃん。サラダを盛るのは真子ちゃん。
「...なんか、小学校の給食当番を思い出すね。」
私の隣で潔ちゃんがそう言うから、『たしかに! 』とつい大きな声を出してしまった。
言われてみれば確かにそうだ。既視感。
「清水、お疲れ。」
「倉尾もお疲れさん。」
延々カレーとご飯を盛り付けゲシュタルト崩壊? しそうなころ。
声をかけられた方を向けば、澤村くんと黒尾くんが立っていた。
「お疲れ。」
『お疲れ様! ダブル主将だ〜。』
潔ちゃんと私が返事をすれば、澤村くんはにこりと笑顔で「倉尾さんもお疲れ様。色々ありがとう。」と声をかけてくれた。
好青年の笑顔。
『いえいえ! 』と答えるけど、つられてこっちも笑顔になる。
「ご飯大盛りとかってできないの? 」
「みんな平等だからできない。多分おかわり沢山あるから、食べ終わったらもう1回きて? 」
「りょーかい。」
澤村くんと潔ちゃんの会話。
なんだろう。この、熟年夫婦感? というか。
安定感だ。安定感。
「疲れてねえ? 」
黒尾くんも私に話しかけてくれる。
『全然! みんないい人で楽しい! 』
「そーか。それは何より。」
『黒尾くんも大丈夫? 』
「おー。」
私と黒尾くんの会話。
潔ちゃんと澤村くんのに比べると、なんだか他人行儀な気がして。
そりゃあそうか。積み重ねた月日も経験値も違う。
私は潔ちゃんから受け取ったご飯にカレーを盛り付ける。
ちょっとだけ、お疲れ様。の気持ちを他の人より多めに込めて。
それを黒尾くんに渡す。
「ありがとな。」
黒尾くんはそれをお盆にのせ、仁花ちゃんにイワシをもらいに行ってしまった。
仁花ちゃんに少し絡んでる黒尾くんが見えて、珍しいと思った。
けどまたすぐに他の人がやってくる。
私は慌てて持ち場に戻り、また延々とカレーを盛り続けた。