第6章 夏合宿やるってよ
『まぁ私のは偶然だよ。それより皆さんは合宿楽しいですか? 』
「楽しいけどきつい。あ、夕はまたレシーブ上手くなってたな。」
『ゆう? 』
「烏野のリベロ。」
『あ、西谷くん! 』
リベロっていいよね。
ユニフォームとかビブスの色が違うから私でもわかりやすい。
私が練習について質問したのを皮切りに、今日のプレーはあの学校が凄かったとか、音駒はあそこが良くなかったとか、こういう時どうしたらいいとか、段々と本格的な話に発展していく。
バレーボールは、頭を使う球技だと思う。
いや、他の球技も他のスポーツも、そうなんだとは思うけど。
それでもボールが一瞬で落ちてくるのに。みんな色んなことを考えて動いている。
凄いな。
「舞衣ちゃーん、ご飯食べ終わったら午後のミーティングしよー。」
『あ、ごめん! 』
真面目に楽しそうに話してる3人をぼーっと見てる私を現実に戻させたのは、かおりちゃんの声。
「あはは、まだ時間あるから大丈夫。体育館のステージのとこにいるねー。」
『わかった! もうすぐ行くね! 』
「うん。でも焦んないでー。」
『ありがと! 』
そうは言っても私のせいで待たせるなんて申し訳ない。
私は残りのおかずを慌てて口に入れた。
「リスみてえ。」
人が急いでるのに、目の前で頬杖着いてニヤニヤしてる黒尾くん。
私は口に手を当てつつも反論は忘れない。
『ふるはい(うるさい)』
「喉つまらせんなよー。」
『わはっへふ(わかってる)』
「なんて? 」
もう! 絶対面白がってる!
ニヤニヤとしながら私に話しかけてくる黒尾くんに、私は机の下で軽く足を蹴った。
「おい! 」
『一生懸命食べてるのに黒尾くんが面白がってるから! 』
ごくんと飲み込んで、黒尾くんに抗議する。
勿論お互い本気でなんかやってない。
おふざけってやつだ。
「選手の足蹴るなんてどーいうことデスカー」
『黒尾パイセンは女の子の足が当たったくらいで怪我するほど非力なんですかー? 』
お互い顔はにやけながら文句言って。
やっくんは「もっと言え! 」って茶化してくるし。
海はニコニコ私たちを見守ってる。
賑やかな昼休み。
『もう! 行くからね! みんなはちゃんと休憩してから来てね! 』
去り際にそう言えば、いいお返事で私を送り出してくれた。