第6章 夏合宿やるってよ
食堂内で赤いジャージが集まる一角に行けば、見慣れた音駒のメンバー。
4人掛けの席の、1つに腰を落ち着ける。
目の前には黒尾くん、黒尾くんの隣に海。
私の隣にはやっくん。
「お前、働きすぎだぞー? ちゃんと飯食えよー。」
『それさっき黒尾くんにも言われたよ。やっくんは心配症だねぇ。』
「そりゃあ、俺たちが誘ったのに倒れさせたらどーすんだよ。」
『わーオトコマエー』
「いや、本気で心配してっから。」
『ありがと。でも大丈夫。楽しいよ? 』
そう言えば、やっくんは少し安心したような顔を見せる。
こういう態度が“お母さん”たる所以なことを気付くべきだ。
お母さんとか言ったら怒るから言わない。
『そういえば、烏野は人数少ないねぇ。』
「変人コンビが補習だと。」
『あ、日向くんと影山くん。』
私の疑問に口を開いてくれたのは黒尾くん。
潔ちゃんから名前を聞いた。
ゴールデンウィークの、超速攻コンビ。
『補習かー。大変だね。』
「まぁ俺らも他人事じゃねーけどな。」
『えー? 』
みんな成績良いのに。
特に黒尾くんなんて、頭いいってやっくんが言ってた。
頭いい人ほどテストとか不安になる、的なやつ?
『烏野は、変わらないねえ。』
「「え? 」」
『うちはほら、今回からリエーフくんがスタメン初参加だけど。烏野は、うーん...上手く言えないけど、今のスタイルを続けたいのかなー?どうなんだろー? って思った。』
「「「...。」」」
『あっ、出しゃばりごめん! バレーのこととかまだ全然知らないけど!! ただ何となく思っただけ! 』
「...倉尾、よく見てるね。」
『え? 』
そう返してくれたのは海。
「マネージャーの仕事もしながら、他のチームの様子まで見てたの? 」
『え、うーん...意識的には見てないけど。目が入った時の様子で、なんとなく...。』
「凄いね。」
『何も凄いことしてないけど...』
「だって研磨も同じこと言ってたよ。」
『え? 』
研磨くんの発言がどれほど精度が高いかを、音駒のバレー部ならよく知っている。
『マジか...私凄いことしてるのかも...』
「そんな真顔で。」
黒尾くんのツッコミに、やっくんと海は少しだけ吹き出してた。
笑うな。