第5章 放課後、音駒高校体育館にて
「「...。」」
あれ?
反応無し?
滑った?
「「うおおおお! 」」
「おい、おま、泣くなよ!!」
「女子のマネージャー入ってよかったっスねぇ!! 」
「やべえええ頑張れる!! 何これ!! 」
「うるさ...。」
いや、そんな反応されると恥ずかしい!!
所謂男子高校生ノリってやつだ、これは。
潔ちゃんも言ってた。嬉しいけど恥ずかしいから反応に困るって。
研磨くんだけが、迷惑そうにしてる。
『あの、ほら、もう最初の試合、始まっちゃうから!! 』
「おおーし! 行くぞー! 」
「「オォーーッス!! 」」
一際大きい掛声と、試合のコートに向かう背中。
赤いジャージに“NEKOMA”と書かれた文字を翻して。
ふふ。
かっこいいじゃんね、みんな。
「それ、重くないの? 」
『えっ! 』
後ろからひょこりと顔を出したのは、研磨くん。
ひょこり、なんていっても、身長は私よりも高い。
そういえばバレー部にいると、身長が気にならなくていいなぁ(やっくんは低いけど言わないでおく)。
「その。肩にかけてるのとか、カゴとか。」
『あ、これ? 』
研磨くんが言うのは、マネージャーバッグとドリンクが入った籠。
救急手当用の備品とかと、私が個人的に使う試合記録用のバインダーや用紙がバッグには入ってる。
カゴの中にある沢山のスクイズボトルは、試合のために今朝用意したもの。
『大丈夫だよ! 研磨くんもこれから試合なんだし、ほら...』
「大丈夫ってことは、重くないわけじゃないってことだよね? 」
言うよりも早く、私の手に持たれてたドリンクの籠を取られる。
『え、いいよ! 試合前だし、余計に疲れると...』
「このくらい大丈夫なんでしょ? なら俺もヘーキだよ。」
掴みどころのない笑顔で、サッサと歩いていってしまう研磨くん。
こういうふとした表情とか、さり気ない仕草とか...あと、たまーに、言葉の端々が、黒尾くんとよく似てて。
やっぱり幼馴染なんだ、って、疑ってるわけじゃないけど。
改めて実感することが、バレー部に入って増えた。
「あれ、研磨なりのお礼だから。気にすんなよ。」
既にもう1つのドリンクが入った籠を持ってくれてた、黒尾くんが、研磨くんと同じように後ろから声をかけてくる。
『そうなの? 』
「そーそー。だから甘えときなさいよ。」
