第4章 ただの同級生
翌日。
今日もいつもどおり、自分の席に行くと、前の席の黒尾くんは机に突っ伏して寝ている。
そしていつもどおり、私がバッグを置いた音で起きる。
「おー...倉尾、おはよ。」
『おはよう。』
猫みたいな欠伸をする彼がなんだか可愛くて、自然と顔が笑ってしまうのがわかる。
バレーボールをしている時とはまるで別人。
「なぁにニヤニヤしてんですか? 」
『んー? ううん、なんにも。』
「ふーん...。」
なんだか腑に落ちない、という表情の黒尾くん。貴方の顔が可愛くてにやけてました、なんて、私はとても言えないから、その表情は見て見ぬふりをする。
黒尾くんは、私に挨拶だけ済まして、また前を向いて机に突っ伏そうとした。
から、私は慌てて彼の背中を指先でトントンと叩く。
『ねぇねぇ、』
「ん? 何? 」
前に倒しそうだった身体をのそりと起こして、彼は身体半分後ろに向いてくれる。
「倉尾から呼んでくれるなんて、珍し〜。」
『ええ、そんなことないでしょ? 最近は特に。』
相変わらずの、少し意地悪な顔。
うーん、モテるのもわからなくはない。
『ねぇ、昨日の返事、してもいい? 』
私の言葉に、黒尾くんは驚いたような表情。
「あっ、」
彼が言葉を紡出そうとした瞬間、
「げぇっ...おまえ、とうとう倉尾に手出したのかよ...。」
げんなりした表情のやっくんが、私の後ろに立っていた。
「はぁ!? 」
途端に大きく表情が変わる、黒尾くん。
「朝っぱらから胸やけするもん見せてんじゃねーよ...。」
「夜っ久くん!? ちが、誤解だ!! 」
少し取り乱した黒尾くんは、なんだか新鮮。
いつも私より上の目線は、余裕で飄々としてるから。
「何が違うんだよ。」
「別にそーいうんじゃねーって! ほら、昨日話したの! マネージャーの! 」
「ん? ...あぁ! 」
一瞬不思議そうな顔をしたやっくんだったけど、すぐに合点がいったようで。
「え、その返事? 」
「そーだよ! 何勝手に妄想してくれちゃってんの、夜久パイセン〜」
「うぜえな。」
そんな小競り合いに、口元が思わず緩んでしまう。