第4章 ただの同級生
放課後。
今日は委員会の仕事もないし、日直もない。
出された課題も少ない日だ。
バレー部に顔を...そう思って、慌ててその思考を振り切る。
もう、行かないんだった。
行けないんだった。
バレー部に行ってたのなんて、ゴールデンウィークとその前の数週間だけ。
なんてことはない。
1ヶ月くらい前までの、日常に戻っただけ。
海と。やっくんと。バレー部の後輩の子と。そして、黒尾くんと歩いていた帰り道を、1人で歩く。
あれ。こんなに広かったっけ。
こんなに遠かったっけ。
なんだかきゅんと寂しくなった気がして、なんとなくスマホを開いた。
その瞬間、潔ちゃんからのメッセージがとんでくる。
潔ちゃんとは、帰ってきてから早速、やり取りを始めている。
なんてことない、ただの会話にすぎないんだけどね。
烏野高校は、今日は体育館の点検で練習がおやすみらしい。
私は思わず、電話のマークに触れた。
なんで押してしまったんだろう。少しの後悔とコール音が混じる。
数コールの後、電波が繋がった音がした。
“はい。”
『あっ。潔ちゃん。』
“舞衣ちゃん。”
『あ、ごめん、ね、急に電話して。』
“ううん。全然。”
『今、帰り? 』
“うん。今日は部活、やすみだから...。”
潔ちゃんの電話口からは、騒がしい小学生みたいな声がする。
『そっかぁ...。私もね、帰り道なの。マネージャーおしまいで...。』
そこまで話したところで、
“清水ー! 大地が肉まん奢ってくれるってー! ”
潔ちゃんの方から、男の人の元気な声。
潔ちゃんを呼ぶ声。
大地、って、確かこの前の。烏野の主将だ。
ということは、バレー部の人達に呼ばれてるのかな。
“あっ...。”
『あ! いいよ! ごめんね、私が急に電話しちゃったから...。』
“えっ、ううん”
『またね! 』
慌ててプツリと電話を切った。
そう。
潔ちゃんは、私と違う、烏野のれっきとしたマネージャーさんなわけで。
1年生の頃から、彼らを支えてきて。彼らと信頼関係を築いてきて。
数週間いて、マネージャー気分だった私とは違う。