第3章 烏野高校排球部
帰りの新幹線では、みんなすっかり疲れたようで。
行きの時の騒ぎ方は、嘘みたいに眠っている。
東京に着いた時、ちゃんとみんな起きてくれるかな...。
私だけでも起きてないと...。
「倉尾、眠い? 」
『えっ、』
たまたま帰りに乗った順番で、隣にいる黒尾くんが、そう話しかけてきた。
『眠い...かも。でも、みんなが東京着いた時起きれるか心配だし...。』
「いや、眠いなら寝ろよ。俺たちのワガママで来てもらったんだし。」
そう言った黒尾くんの言葉に、ハッとする。
あ、そうか。
これが終われば、私たちはまた、ただの同級生。
席が前後で、たまに話をするくらいの。同級生に戻るんだ。
東京につくまで...。
「俺いつも起きてっから、大丈夫だよ。」
『そうなの...? 』
「おー。」
黒尾くんの低い声が、新幹線の振動と相まって、なんだか心地いい。
起きてたいのに、瞼が言うことを聞かない。
『...そういえば、潔ちゃんに、』
なんとか寝ないように、頭を動かすために話題を探す。
今日1番気をとられたことが、口をついて出てきた。
「潔ちゃん? 」
『烏野のマネージャー...』
「あぁ。あの美人の。」
『...黒尾くんと、付き合ってるのか、きかれちゃった。』
「はは、なんで? 」
『わかんない...。』
「なんて答えたの? 」
『ちがうよ、って...。』
黒尾くんが私の事、見てるわけないのにね。
そう思ったところで、私の意識は、プツリと切れた。
おやすみ、って、黒尾くんが言ってくれた気がしたけど、夢なのか現実なのかわからなかった。