第3章 烏野高校排球部
『...というよりは、ビックリした。でも心配もした。』
だって、黒尾くんにとってバレーボールがとても大切な存在であることを、私は知ってるから。
ここ数週間で、今まで感じてたよりももっと、大切なんだと思い知った。
『練習大丈夫? 』
「こんくらいよくあるよ。ヘーキヘーキ。」
『今度からは、怪我したらまず言ってね? 』
「へーい。ありがとな。」
あんまり悪びれる様子もなく、手をプラプラとさせて練習の輪に戻っていく黒尾くん。
『あ...潔ちゃんもありがとう。』
「ううん。全然。」
私は潔ちゃんのもとへ戻って、音駒高校との烏野高校の試合を観る。
試合中の記録の付け方まで教えてもらった。優しいな、潔ちゃん。
潔ちゃんの隣で、不慣れな試合の記録をつけて。
たまに間違えて。また教えて貰って。
結局、音駒は烏野高校との試合は全勝。
私も、不格好だけど、それなりにマネージャーとしての仕事をして、最終日が終わった。
「新幹線の時間あるから支度急げよー。」
黒尾くんの声が響く。
選手達は荷物をまとめて帰り支度。
私は潔ちゃんの片付けを手伝う。
『潔ちゃん、これは? 』
「あ、それ重いよ。一緒に持つ。」
備品が入った大きなカゴを、2人で半分ずつ取っ手を持って移動させる。
『...潔ちゃん、今日はありがとうね。』
「え? 」
『おかげでちょっと楽しかった。マネージャー。』
そう言うと、潔ちゃんは「よかった」と笑ってくれた。
「...ねぇ、舞衣ちゃんはさ、」
『ん? 』
「音駒の....主将の人と、付き合ってるの? 」
『えっ!? 』
予想もしていなかった唐突な質問。
思わず大きな声をあげて、周りにいた数人の選手たちが私の方を見る。
恥ずかしくなって、もう遅いけど口を抑えた。
『...なんで? 』
「いや...なんとなく?」
私が黒尾くんと?
有り得ない。なんでだろう。
私は黒尾くんのことを見ていたけど、別に好きで見ていたわけではない。
黒尾くんは、そもそも私のことなんか眼中に無いだろう。
私たちは、同学年の、席が前後で、最近すこし話すようになった友達。
それ以上でもそれ以下でもない。