第3章 烏野高校排球部
翌日。
朝から新幹線に乗って移動し、早速練習試合がある。
必要な備品が入ったバッグを持ち、予め先生が予約しておいてくれたチケットをみんなに手渡すのが私の最初の仕事。
「おいまとまって歩け。学校じゃねえぞ。」
意外。いや、でも部活中もわりと皆のことまとめてたかな...。
主将らしく、3年生らしく部員をまとめる黒尾くん。
新幹線の中では、海がやたらとテンションが高い。そういえば、好きとか言ってたな。新幹線は一期一会、みたいな。よくわかんないけど。
烏野は、宮城県にある。
仙台しかイメージのなかった私達には、新鮮といえば新鮮。
でも、変わらないといえば変わらない。
最寄り駅で降りれば、郊外にある音駒とよく似ている景色が広がっていた。この景色は好きだ。
練習は、烏野総合運動公園を拠点に、連日他の高校との練習試合をする。黒尾くんたちが言ってた、所謂因縁の烏野高校と戦うのは、最終日。
そんなスケジュールを頭に入れるくらいには、少し余裕が出ている。最初、黒尾くんに誘われた時に部活に顔を出してよかった。
みんなとはここ数週間で大分慣れたし、仕事やルールも少しずつわかるようになってきた。
1日、2日と練習をこなし、マネージャーとしての仕事も少しずつ覚えてきた。まだ言われたことをやる位だけど、ある程度のことは言われればできる。
初日は黒尾くんに助けて貰ったボールも、今は飛んできても手で弾くことができるようになった。痛いけど。
研磨くんが「音駒の脳」というのも、今ならなんとなくわかる。
音駒の試合は拾って拾って、研磨くんが攻撃の構成を行う。
脳が正常に機能するために、メンバーはひたすら繋ぐ。
どんなボールも拾ってしまう姿は猫のようにしなやかだ。
『すごいなぁ。』
練習試合を見て、ポツリと口にしてしまった言葉。
うちのバレー部がこんなに凄いなんて思わなかった。
言われたことを精一杯こなし、みんなの助けを借りながら動き、たまにみんなのプレーに見惚れながら、気付けばあっという間に烏野高校との練習試合となっていた。