第3章 烏野高校排球部
あの日以来、私はたまにバレー部に顔を出すようになった。
委員会がない日とか、課題が少ない日とか。毎日ではないけれど。
球技は苦手だけど、運動は苦手じゃない。
スポーツも、ルールさえ分かれば見るのは好きだ。
3年生以外の部員とも交流を図るために、たまに話しかけたりルールを教わったりする。
こうして、黒尾くんに誘われた合同練習の前日には、バレーのルールくらいなら何とかわかるようになった。
『明日から宮城だね。』
「おー。」
バレー部に顔を出した日は、海・やっくん・黒尾くんと帰るのが、いつの間にか日課になった。あとたまに、後輩数人。
だから、バレー部に顔を出した日の帰りは、必ず最後の道は2人きり。
今日も黒尾くんと、並んで歩く。付かず離れずの間の距離。
「俺宮城行くの初めてだわ。」
『私も。何があるんだろ。あ、ずんだ? 』
「あー。あと牛タンとか? 」
『あぁ、牛タン。』
遠足に行くんじゃないんだけど、何故か話題は食べ物に逸れる。
私と黒尾くんの、共通の話題って無いなぁ。
海とは委員会の話が多い。
やっくんは、何となくクラスで同じくらいのポジション?というか。テンションが似てるというか。だから、話しやすいというか波長が合う。
でも黒尾くんは、生きている階層が少し違う印象だ。
だからなんだか、当たり障りのない話をしてしまう。
「じゃあ、俺ここだから。」
『うん。また明日。』
私の家より手前にある黒尾くんの家。
またね、と告げて、どちらからともなく背を向けて。私は1人で歩き出す。
明日はいよいよ合同練習の開始だ。