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黒尾くんと同級生ちゃん

第2章 臨時マネージャーはじめました


午後6時半。
練習が終わり、居残り練習も終わり。帰路につく。
最後の片付けを引き受け、みんなには着替えに行ってもらうと、それだけなのにとても有り難がられた。

片付けを終え、用具室と体育館の鍵を返すと、校門の前で黒尾くん・やっくん・海と、後輩の数人が待っていてくれていて。
帰り道の途中、コンビニで、リエーフくんからお詫びにとアイスを買ってもらってしまった。


『別に良かったのに...ぼーっとしてた私も悪かったし...。』
「いや、ほんと...すいませんっした...。」


190cmのリエーフくんが、猫背でしょげているのがなんだか可愛い。


『じゃあ、遠慮なく。これでチャラってことで。』


申し訳なさそうなリエーフくんからアイスを受け取ると、少し顔が明るくなった。
アイスの種類1つで盛り上がる、賑やかな帰り道。
こんなにワイワイと帰るのは久しぶり。みんな、仲がいいなぁ。

帰り道は、分かれ道ごとに人が減る。
芝山くんと犬岡くんに、お疲れ様と言って。
リエーフくんと山本くんに、またね、と告げて。
海にお疲れと言って。
やっくんにまた明日と言って。


『家、近かったんだね。』
「そーみたいだなあ。気づかなかったわ。」


気付けば黒尾くんと2人きり。


「悪かったな、急に誘って。」
『ううん、楽しかった。待っててくれてありがとう。』
「いーえ。おかげさまで、いつもより早く帰れてるんで。」
『いつもあれから片付けやるの? 』
「おー。うちはマネージャーいねーかんなー。」
『そっか。選手が全部やるの、大変だね...。』
「まぁ、もう慣れっこだけどな。」


うちの学校は、昔は強豪校だったらしい。誰かが言ってた。
そして、今また強豪校を目指しているらしい。これは、1年生の時にやっくんが教室で言ってた。


「でも、今日みたいに手伝ってもらえたり、合宿についてきてもらえんのは、正直、有難い。かな。」


黒尾くんは慣れたと言う。それは本当だろう。でも、雑用みたいなのに時間を割くのは、望んでいることではないのかもしれない。
その顔は、いつも眠そうに前の席に座る「黒尾くん」じゃなくて、「音駒高校バレー部主将」の顔だった。


『どういたしまして。』


私は黒尾くんの顔を見ず、そう言ってあげた。
アイスは春の夜には少し冷たい。でも甘い味がした。
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