第14章 親友からの電話
「...で、あの、黒髪のトサカくんが黒尾くん? 」
『うん。』
「んー...やっぱアタシはタイプじゃないなぁー。」
『私と美華、昔からタイプが合ったことない。』
「あはは! たしかに〜! まぁ舞衣と被ったら勝ち目ないから! 」
『こっちのセリフ。』
そんな言い合いをしながら、1つのパフェを2人でつつく。
さっきまで、運ばれてきた大きなチョコレートパフェに、2人で写真とSNS用の動画を撮って大騒ぎ。
やっと落ち着いて、口にパフェを運んでいる。
電話でも話してたけど、会えば余計に話が尽きない。
「リップ可愛い、どこの? 」
『これオペルの新作。可愛いよねー。』
「流行ってるよね? みんな持ってる。」
『色落ちしなくていいよ。オレンジも可愛いの。まって、見せる。』
「えー、まじで? 見たい。」
女の子に欠かせない情報交換。
甘いパフェと、可愛い内装の店内と。
カラン、と、扉が開く音。
「鉄朗、こっち! 」
黒尾くんと同じ名前だ。
思わず振り返ると、
『...黒尾くん...?』
そこには、オシャレな店内には似つかわしくない、ジャージ姿の黒尾くんがいた。
上は黒いTシャツだけど、下はあの赤いバレー部のジャージ。
間違えない。間違えるわけが無い。
そして、黒尾くんがカフェに1人で来る訳もなくて。
一緒にいるのは、女の人。
高校生? それにしては大人っぽい気もする。
少なくとも音駒の人じゃない。
誰?
「...え、黒尾くん...だよね? 」
『うん...。』
え?
なんで、女の人と黒尾くんが、会ってるの?
もしかして...彼女、とか?
「お席ご案内しますね。」
「はーい」
綺麗な人だ。ヒールとアクセサリーが良く似合う。
自分のイミテーションのイヤリングがなんだか情けない。
隣を、店員さんと黒尾くんたちが通っていく。
気付かれないように身を竦める。向こうも気づかない。
当たり前か。
お客さんのこと、ひとりひとりジロジロ見たりしない。
「ごゆっくりどうぞー。」
「ありがとうございます。何食べる? 」
「なんでもいーよ」
少し呆れ顔で優しく微笑む黒尾くんが、店内に飾られた植物の間から見える。
「大丈夫? 出る? 」
『ごめん...。』
気が付いてくれる、優しい美華。
それに縋って、私たちは席を立った。