第15章 もう1人の親友
結局お店を変えたけど。
黒尾くんが女の子と歩いてる光景が、衝撃的で。
結構ショックで。
「ありがちな、お姉さん的なオチじゃない? 」
『そうだといいな...。』
美華は優しいから、励ましてくれて。
でも私は、せっかく美華と楽しい時間のはずだったのに、イマイチ気持ちが入らない。
美華もそれを察してくれて、夕ご飯前の時間で解散した。
せっかく久しぶりに会えたのに。
申し訳ない。
とぼとぼと、家までの道を歩く。
思えば、どうして黒尾くんに彼女がいないなんて都合よく思ってたんだろう。
彼女がいるかどうかなんて、聞いたことも無い。
みんなが、私のことを好きに見えると言うから、勝手にいないものだと思っていた。
そして、心のどこかで、勝手に私のことが好きだと思っていた。
何を自惚れてたのか。
自分で自分の思考が恥ずかしい。
家に着いて、ご飯も食べずに暗い部屋のベッドに突っ伏す。
そうだ。
私だって、同じクラスになる前から、黒尾くんのこと知ってた。
背が高くて、かっこよくて。
勉強もできて、どこかドキッとする距離感が自然とできる人で。
優しくて。面倒見が良くて。でも可愛いところもあって。
彼女くらい、いるよね。
あの人とは、どこで知り合ったんだろう。
付き合ってるならいつから?
私が黒尾くんと一緒にいれて嬉しい時も、ドキドキしてる時も、黒尾くんには彼女がいて。
私が合宿中、黒尾くんの話をみんなにしている時も、黒尾くんはあの人におやすみのメッセージを送ったりしてて。
私が黒尾くんに会えることを楽しみにしながら寝る夜も、あの人と電話をしたりしてて。
あの慣れた仕草もきっと彼女が教えたもので。
寝起きが少しだけ不機嫌で悪いのも、あの人は前から知っていて。
私が知らない寝癖の理由も甘い仕草も、彼女が知っていて見ている。
カフェで見た、少し呆れた優しい顔が頭をよぎる。
あの後どうしたのかな。
楽しくふたりでお昼を食べて。
手を繋いで街中を歩いて。
今頃、どっちかの家に行ったりして?
黒尾くんとあの人のキスシーンまで鮮明に想像してしまって、慌てて首を振る。
これ以上考えたくない。
あぁ、だめだ。
『私、黒尾くんのこと、大好きじゃん...。』
自分が自覚していたより、もっと強く。深く。
黒尾くんのことが大好きだと、今更気づく。
