第8章 魔王の告白
信長様はいつでも真っ直ぐで嘘がない。
(私を抱く理由に嘘はいっぱいあるけど.....)
だからこそ不思議で仕方がないことがある。
なぜ、夜襲なんて卑怯な手で私の屋敷を襲い父と母の命を奪ったのか.........
こんなに立派なお城に住み、間も無く天下人になろうという人が、ただの領主であった父の命を奪う理由は何だったんだろう。
『貴様はその時、俺を見たのか?』
以前信長様にそう聞かれ、夜襲をかけた首謀者を見ていない私はそこから疑惑がどんどん膨らみ、胸につっかえたままだ。
身元を明かせない今となっては確認のしようがないのだけど......
それに、もしかしたら........なんて思うのは、そう思いたいという自分の身勝手な心の為せる技なのだろう。
「俺が天下人となった時、空良、貴様は天下人の女となる」
「は?」
「俺が貴様から全てを奪ったのなら、その全てをこれから貴様に与えてやる」
何.......言って..........
「っ..........父と母は.....もう戻っては来ません」
「死んだ者を生き返らせる事はできんが、貴様が両親から受けるはずであった愛情以上に貴様を愛してやる」
「.............それは........」
どう言う.........意味?
「俺を、どうしても許せぬと言うなら、天下を取るその日まで待て、その後でなら俺を煮るなり焼くなり好きにすればいい」
「.......そんなに......待てません」
...........早く.......目を逸らさないと.........
その目に、捕らえられる前に...........
「待てなくとも待て。それまでは俺のそばにいろ」
顔が再び近くまで迫り、おでこと鼻先がくっついた。
「ま、待ちません。それに、魔王の女にはなりません!」
「魔王はいずれ天下人となる。そして貴様は、刺客から天下人の女となる。その時が楽しみだな」
愉しそうな、人懐っこい笑顔が目の前で広がった。