第47章 来年の今頃は 〜お正月sp〜
「っ、お手柔らかにでお願いします」
(本当に、手加減は少しして欲しい……)
「手加減ならいつもしておる」
「もう、どこがですかっ!」
信長様の胸を押すとそのまま腕を引かれて再び腕の中へと閉じ込められた。
「来年の今頃は子も二人に増えて賑やかになるな」
「はい。信長様はこの子、どちらだと思いますか?」
この質問は、実はもう何度もしていて、
「姫で間違いない」
信長様は必ずこう答える。
「ずっとそう仰ってますよね」
「俺の勘はただ一つを除き外れたことがない」
「その一つだけと言うのが気になりますが、なんですか?」
誰よりも強く猛々しい信長様でも外したことがあるなんて気になって、思わず聞き返してしまった。
「貴様だ」
「え、私…ですか?」
予想外の答えに、私の胸はドクンっと跳ねる。
「俺の生涯に女を愛する日が来るとは思ってなかったからな。誰も娶らず、いや、たとえ娶ったとしても形ばかりの夫婦生活を営むのだと思っていたが、こればかりは外れたな。……っおい、そこは泣くところではなく喜ぶ所だ」
「っ信長様が泣かせたんです」
一粒の涙をこぼした私を見て信長様は驚き、そしてその涙をそっと指で拭ってくれた。
「母になると涙脆くなると聞きましたが本当ですね」
「では来年は、もっと脆くなっておるな」
「ふふっ、そうかもしれません」
泣く事を封印していた私が、信長様の大きな愛情によってその感情を取り戻したのはもうずいぶん前の事。
「私、信長様の妻になれて本当に幸せです」
「阿保、これ以上煽るとどうなっても知らんぞ」
優しい口づけと抱擁の中、私の新年は穏やかに過ぎて行った。