第8章 魔王の告白
.......今.......何て.......言った?
言葉の意味を確かめる前に、どさっとその身が褥に倒された。
「っ、.......信長様?」
私を見下ろすのは......熱をはらんだ目だけど、もっと何か、深い思いがあるような.......
「空良」
私の名前を艶めいた声で呼ぶ口がだんだん近づいてくる。
思いに気付く前と後では全然違う。
病み上がりの身体はまだまだ怠いけど.......
「んっ.....」
唇が重なるだけで心が震える。
「っ、.......ふ、........」
初めて抱かれた夜から、幾たび唇を重ねたかわからない。初めては、舌を噛み切ろうとする私を止める為だった。突然差し込まれた舌に訳が分からず動揺したのを覚えてる。
「はっ、.............んぅ」
今は、差し込まれ絡まる舌が心地よくて蕩けそうで.........指を絡め合うように繋いで褥に沈められた両手の体温も擽ったい。
いつの間に.....こんなに好きになっていたんだろう。
こんな、もっと触れてほしいと思うほど好きに....
「っ.........」
離れる事を惜しむように銀糸が伸びる。
「空良、俺のものになれ」
絡めた指を解き、その手は無遠慮に私の胸を掴む。
「っは、待って........」
先を急ぐ手を掴み、私は信長様を見つめた。
胸の音はドキドキと煩いけど、もうこれ以上は進めない。
「お忘れですか?私が、あなたの命を狙っている事を、貴方は私にとって両親の仇だと言う事を.....」
私たちには、絶対に超えられない壁がある。
「忘れてはおらん。貴様にならこの命をくれてやってもいい」
信長様は掴んだ私の手を掴み返してその手首に口づけた。
「俺は近い将来必ず天下を取る。今の様な身分に左右される事なく、争いのない世を作ってみせる。その為に、数多の命を犠牲にしてきた。貴様の両親がどこの誰なのか、貴様が話さぬゆえ分からんが、恐らくその中にいるのであろう。だが、俺は後悔はしておらん、これからも、俺の行く手を阻む者は容赦なく斬り捨てる」
「..........信長様」
迷いのない強い信念を宿した目が私を射抜いた。