第8章 魔王の告白
こういう時、どうするのが正解なのかは分からないけど、目の前にある私を抱きしめる腕に手を添えて、そっと頬を寄せると、ぴくっと、信長様の腕が動いて、その腕に力がこもり少し強く抱きしめられた。
とくんとくんと心の臓は更に煩く速くなり、ためだと分かっているのに、心が、身体が喜んでいるのが分かった。
生まれて初めて恋しいと思った人は両親を殺した人。
そんな親の仇を好きになるなんて、こんなに親不孝な娘はこの日ノ本を探しても私だけだろう。
父上、母上ごめんなさい。
今だけ..........あと少しだけこの温もりを感じたら離れるから.....
あと少しだけ、好きな人に抱きしめられる事を許してください。
言い訳を心の中で必死に唱え、逞しい腕を頬に感じながら目を閉じた。
少しすると、耳元に唇の感触が.....
「っ..........」
突然の事に、肩が跳ねて身体が窄まった。
「の、信長様?」
「身体を拭いているだけだ、じっとしていろ」
かぷっと、今度は耳を食まれる感触。
「ひゃっ!」
身体.....拭いてない.....と思うのだけど.....
だって手拭いは、私を抱きしめる手に握られていて、私の目の前にある。
にゅるっと、今度は耳の中に舌が入っていく。
「んっ、.....信長様?」
「拭いてやれんだろう、じっとしておれ」
「やっ、だって........んっ」
執拗に耳ばかり.....しかもそれは拭いているんじゃなくて、舐めているんじゃ.......
「っ、手拭い.....ここにありますけど」
目の前にぶら下がる手拭いを引っ張って訴えた。
「ふんっ、手拭いなど後だ。どうせ今から貴様を抱くのだから」
「はっ?」
だってさっき、
「な、何も感じないって、私の裸なんて見慣れたって......」
確かに言ったのに.....
慌てて振り返り信長様の顔を睨むと、ふっと罰が悪そうに笑った。
........な、何?
「........そんな事は、貴様の体を拭いて抱くための口実だ」
「う、嘘ついたんですか?」
「嘘ではない、貴様を恋しいと思う男心だ」
「えっ?」