第8章 魔王の告白
「あの....自分で出来ますから、部屋から出て行ってもらえませんか?」
私の寝巻きの紐に当たり前のように手をかける信長様の手を止めた。
「阿呆、その手を退けろ。昨日湯殿で気を失ってから丸一日熱を出して眠っておったんだ。余り力も入らんだろう、じっとしていろ」
「えっ、熱?.......一日って、私そんなに眠って!?.......っ、やっ、自分で出来ます!」
引っ張る様に紐を解いていく信長様.....
裸なんて、あり得ないほどに見られてるけど、はいどうぞと見せられる訳ないのに!!
「言っておくが、貴様の裸など見慣れておる。湯殿で気を失った貴様に寝巻きを着せたのも、熱を出して汗をかくたびに着替えさせたのも全て俺だ」
「なっ!!!!!?」
「それに、何度貴様を抱いたと思う?今更見たところで何とも思わん」
「そ、それは.....」
もう、.....見飽きたと言う事でしょうか?
自分の気持ちに気づいた途端に飽きられるなんて......恋をしてはいけない人だと分かっていても悲しいお知らせだ。
でも、それとこれとは別。
やっぱり裸は見られたくない!!
「やっ、無理です!その手を離して下さい」
手際良く紐を解いた大きな手は、袷を片方持って肩から下げようとしている。
「信長様!」
「気にするな、こんな姿の貴様を見ても何とも思わん。反対にそんなに抵抗するとは、貴様の方が俺を意識しておるのか?」
「そ、そんな事ありません」
「では大人しくしろ」
「やっ、意識しなくても、裸を見られて平気な人などいません!」
「俺は平気だ。貴様もずっと、湯上りの俺の身体を拭いておったであろう?」
「そっ、それは......私は侍女で、仕事ですから」
見ないように拭いていたし.....
「ならば、貴様が病に倒れたのは俺の責任だ。俺には貴様の面倒を見る理由がある」
「うぅーーー」
もう、何を言ってもダメそうだ。
「っ、..........じ、じゃあ背中だけ、拭きづらいのでお願いします」
仕方なく、何とか譲歩できる背中だけを拭いてもらう事にした。
「................強情な奴だ」
チッと、小さな舌打ちが聞こえた気がしたけど、信長様は何とか納得してくれ、私は自分で寝巻きを肩からずらして前を布団で隠すように背中を出した。