第7章 言えぬ思い〜信長編〜
『御館様っ!』
騒ぎの音を聞きつけて、秀吉と家康がやってきた。
『これは........』
『まだ殺してはおらん。其奴らを地下牢に連れて行け、死ぬより重い罰を与える』
簡単に死ねると思うな、地獄を見るより辛い罰を与えてやる!
怒りは頂点に達しており、その怒りの収め所も分からぬままでいる俺に、空良は信じられぬ言葉を言ってきた。
『信長様.......どうかあの人達の命は、助けてあげて下さい』
何とか抑えていた真っ黒な感情のタガが外れた。
気付けば空良を湯船に投げ落とし、頭を強く押して湯の中に沈めていた。
『ごぼっ!ごぼぼっ!!!』
空良についた男どもの痕や匂いを洗い流したかったのと、俺の気持ちも知らず男どもの命乞いをしてきた空良に、無性に腹が立った。
沈められた空良の耳には勿論耳飾りはついていない。男どもに乱暴された際に落ちたのやも知れんが、二つとも同じ場所に落ちるなどあるのか?もしや、自ら外したのか!?
疑惑はさらなる怒りを生み出し、空良の頭を押す手の力を強めさせた。
やがて、湯を掻きもがいていた手が沈み、空良の身体が湯の中へ深く沈み始め、俺は漸く我に返り慌てて空良を引き上げた。
『ごぼぼ...........ごぼ......................』
『ぐっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ.........何で、っぐ、こんな事.....ごほっ、ごほっ!』
咽せてお湯を吐き出す空良を強く抱きしめた。
『俺の苦しみはそんなモノではない!』
『ごほっ、........っ、信長様?』
『なぜ、耳飾りをしておらん!言ったはずだ!外せば、想像を絶する仕置をすると!言い訳があるなら聞いてやる。言ってみよ!』
『それは........』
嘘でもよかった、乱暴された際に二つとも落ちたのだと言えば、怒りは少しは治まったはずだった....なのに........
『信長様の女だとは思われたくなくて.....』
ここへ来て、更に空良は俺の怒りを煽る。