第7章 言えぬ思い〜信長編〜
夕餉になれば、天主に空良が戻って来るとは分かっていたが、俺の知らない空良の姿も見てみたくなり、御殿の中を探し歩いた。
よく見れば、本丸の廊下は塵一つなく綺麗に拭かれており、真面目な奴らしい仕事ぶりに顔が緩んだ。
『本丸にはおらんか。あのじゃじゃ馬め、どこまで羽を広げておる』
まるで童の遊びの様に、何処かに隠れている空良を探している様な気になり愉快な気持ちで二の丸へと続く廊下を渡った。
『っ、........信長様っ!.......信長様っ、助けて!!信長様っ!!』
廊下を渡り切った途端、俺の名を叫ぶ空良の悲痛な叫びが聞こえてきた。
『空良?』
ドクンっと、胸が嫌な音を立てる。
声のする方へ走れば、武器庫の前に空良の耳に付けたはずの耳飾りが二つとも落ちている。
『空良!!』
怒りに任せ備品庫の扉を開けば、脚を開かれた空良の姿.......しかも、着物は破られ俺しか見たことのない綺麗な奴の身体が露わになっていて、男二人が何かをした事は明らかだった。
『貴様ら、その女に何をしておる?』
ふつふつと、感じた事のない怒りが込み上がって来る。
『お、俺たちは何も、この女の方が誘ってき、....ぐぁっ!!』
その場で首を刎ねるつもりであったが、それを空良の前で見せるのは、奴の中の思い出させたくない記憶を呼び覚ましそうで憚られ、かする程度に斬り倒した。
『空良!』
羽織を脱いで空良に被せる。
チラリと見えた白い肌に、俺がつけた覚えのない爪痕が見え、どす黒い感情に支配されていくのが分かった。
『信長様.......』
身体も声も震わせながら俺の名を呼ぶ空良を無言で抱き上げ強く抱きしめた。
俺は、空良を..........