第7章 言えぬ思い〜信長編〜
「空良......」
湯船で俺に酷く抱かれた空良はあのまま俺の腕の中で気を失い、湯殿からこの天主へと抱き抱え戻った時には、熱にうなされていた。
「空良、薬だ」
家康より渡された熱冷ましを己の口に含み空良に口移しで飲ませる。
コクンと喉が動いたのを確認して、その後も薬が無くなるまで飲ませた。
「軟膏も塗るゆえ、着物を開くが怒るなよ?」
『な、何するんですか!?』と言って顔を赤くして怒る空良の顔が思い浮かび、口から少し笑いが漏れたが、寝巻きの紐を解いて袷をゆっくり開くと、そんな笑いは一瞬で消えた。
口づけの痕とは言えない程に酷く血の滲んだ傷痕が、空良の白い肌に無数に散らばっている。
「........少し、染みるぞ」
熱にうなされて応えるはずのない空良に俺は声をかけずにはいられない。
酷い事をした.....
男どもに乱暴されそうになっていた空良を見た途端、今までに感じたことのない怒りに心が支配され、気づけば空良を湯の中に沈めていた。
その後も怒りは治まらず、空良が腕の中で動かなくなった事にも気づかず暫くは空良に行為を続けていた。
加減が、分からん........
空良をこの手に抱いて以来、それまでどうやって女を抱いていたのかが分からなくなった。
『空良貴様............まだ、男を知らんのか?』
『そんな事...あなたには関係ない!』
いつもの女たち同様に、戯れに抱くだけのつもりであったが........ 何も知らぬ女は強がりながらも、必死で俺にしがみつき、恐怖と涙を堪えていて、その必死な様に妙に心が擽られた。
唇を重ねれば、それは柔らかで甘く離し難くなり、肌を重ねれば、途端に雷に打たれたような感覚を覚えたのは今でも忘れられない。
こうして、本能寺で俺を襲った美しき刺客は、俺の手に堕ちた。
俺を恐れる事なく憎しみを込めた目で見る女は、俺を殺せぬとわかると、今度は何度も命を絶とうとした。
そんな空良を逃さぬように、自ら命を絶たぬように賭けで縛り、天主に閉じ込めた。