第7章 言えぬ思い〜信長編〜
「空良を襲った者たちは、三日前から城での勤務を始めたばかりの者たちで、空良の事は本当に知らなかったそうです」
「.............そうか」
夜になり、秀吉と家康が空良を襲った者たちの取り調べを終え天主に報告にやって来た。
「空良から誘ったと言うのも嘘だと....」
ドンっ!!
聞くのも腹立たしい言葉が秀吉の口から飛び出し、俺は強く机を拳で叩いた。
「秀吉、そんな事は確かめずとも分かる」
空良は、そんなことをする女ではない。
「っ、......申し訳ありません。して、奴らをどうしますか?」
「...............二度と空良の目に入らぬよう、この安土から遠くへ放り出せ」
「命を、.....助けるのですか?」
驚いた声の秀吉と、その隣でこれまた驚いた顔の家康。
「空良の希望だ。奴らを殺しては、空良が二度傷つくことになる」
本来ならば、八つ裂きにしても足りぬ程だが、それでは空良をまた苦しめる。
「分かりました。.......... 空良は、あれから大丈夫ですか?」
閨の方に少し顔を向け、秀吉が心配そうに俺に聞いてきた。
「湯殿で気を失ってから熱を出して寝ておる。.......家康」
家康に目を向けると、家康は手に持っていた薬を俺の机に置いた。
「熱冷ましと軟膏です。熱冷ましは分かりますが軟膏って、...あの子あいつらにどこか傷つけられたんですか?」
「........いや、俺が傷つけた」
「はっ?」
驚いた家康の顔。
「話は以上か?終わったのなら出て行け」
「「はっ!..........」」
頭を下げながらも、まだ何かを聞きたそうな二人を横目に、俺は閨へと足を向けた。