第6章 言えぬ思い
「空良!」
信長様は刀の血を払い鞘へ収めると、羽織を脱いで私に被せ、口の中に押し込められた手拭いをとってくれた。
「信長様.......」
無言で私を抱き上げ強く抱きしめる信長様に、助かったと言う安心感と、信長様に人を斬らせてしまったと言う罪悪感で、身体が震えた。
「御館様っ!」
騒ぎの音を聞きつけて、秀吉さんと家康がやってきた。
「これは........」
血が飛び散り、斬られて倒れた男たちがいる備品庫を見て、秀吉さんと家康が固まった。
「まだ殺してはおらん。其奴らを地下牢に連れて行け、死ぬより重い罰を与える」
久しぶりに見る、信長様の冷たい目にぞくりとする。
「はっ!」
秀吉さんと家康は何も言わず頭を下げ、その男たちを連れ出した。
「信長様.......どうかあの人達の命は、助けてあげて下さい」
身体はさっきの恐怖で震えたままだし、あの人達を許すことは出来ない。でも、死んでいい命なんて無いはずだし、信長様を憎む人を増やしたく無い。
「信長様........」
「空良、少し黙っていろ」
明らかに怒りを含んだ声と顔が私の言葉を止め、信長様は私を抱えたまま歩き出した。
「っ、..........」
本能寺の時でさせ見せなかった信長様の怒りに満ちた顔。
きっと、本気で私の心配してくれたのだと思い、申し訳なさで一杯になった。
天主へ連れて行かれると思っていたのに、信長様は湯殿へとやってきた。
「あの......」
戸惑う私に構わず、私にかけた羽織を勢い良く取って脱衣所へと落とすと、私をそのまま湯船へと連れて行き投げ落とした。
ザパーーーン!!!
お湯は勢いよく跳ね上がる。
「っ、わっ、の、信長様!?」
斬り裂かれた着物はお湯を吸い込み私の体に重くのしかかる。
動きを制限されもがいていると、着物を脱いだ信長様が湯船に入ってきた。
「の、信長様っ.....!?」
散々私を抱いたその身体を見るのは初めてでは無いけれど、急な展開に驚き声を上げる私に構わず、信長様は私の頭を強く押して湯の中に沈めた。