第47章 来年の今頃は 〜お正月sp〜
「……っご馳走様でした」
「もう一つあるが食うか?」
袂の中の蜜柑をチラつかせ、信長様は試すような顔を向ける。
「自分で食べても良いなら頂きます」
(いくら美味しくてもあれでは味わえない)
「残念だな。だが貴様の体調が優先だ。今回は譲ってやる」
本当に残念そうな顔をしながら信長様は私の片手を取り手の平の上に蜜柑を置いてくれた。
「ありがとうございます」
そのまま握っていると、
「食べんのか?」
「あ、本当はお腹いっぱいで….ぅっ、」
気持ち悪さが途端に込み上げ、食べさせてもらった蜜柑が逆流を始める。
「ごめんなさいっ!」
布団から出て桶を手に取ると、信長様から見えない場所まで行き気持ち悪さを吐き出した。
「空良っ!」
「ダメっ!来ないで下さいっ!」
こんな姿、せっかく蜜柑を食べさせてくれた信長様には見せられないのに、
「俺に構わず全て吐き出せ」
信長様は私の元へ来て私の背中をさすってくれる。
「っ、汚れてしまいます。それにお目汚しに……っ!」
「構わんと言っておる」
信長様はそのまま私の背中をさすり続けてくれ、全てを吐き出した後はお水を飲ませてくれ私を再び褥へと運んでくれた。
「本当にすみません」
あんな汚物を見せてしまうなんて、恥ずかしさよりも申し訳なさが勝る。
「なぜ謝る?貴様と俺の子のためだ。何も隠すことも申し訳なさを感じることもない。だが、貴様がこれ程に苦しむのならば、これ以上子はいらぬ」
私の頭を撫でながら、信長様は心配そうに私を覗き込んだ。
「信長様…」
確かに私は人よりも悪阻がひどい(らしい)
何も食べられないし、起き上がる事も難しい。そして食べても全てを吐き出して痩せていってしまう。そんな私を見ている信長様がそう言われても仕方がないのかもしれない。
でも、
「でもそれでは、信長様の夜伽の相手ができなくなります」