第47章 来年の今頃は 〜お正月sp〜
「ありがとうございます。そうですね。私も吉法師の時のような思いはしたくないですし、お言葉に甘えて、ゆっくりさせてもらいます」
吉法師を失いかけたあの時のような事は絶対にしないし、してはいけない。
信長様の手に自分の手を被せて目を瞑り、感謝を伝えた。
「そうだ、これならば食べられるだろう?」
信長様はそう言うと袂に手を入れて蜜柑を取り出した。
「わあっ蜜柑!食べたいです」
ご飯はあんなにも気分を悪くさせるのに、水菓子や塩っぽいものは食べられるから不思議だ。(それでも吐いてしまうことが多いけど)
「ならば口を開けよ」
「えっ!?」
「食べさせてやる」
蜜柑を剥きながら信長様は企みいっぱいの笑顔を向ける。
「っ、自分で食べられますっ!」
「ダメだ。口を開けろ」
ずいっと蜜柑の果肉を一房手に取り私の口に押し当てる。
これはもう言う事を聞くしかなさそうだ。
羞恥に駆られながらも口を開けると、蜜柑が口の中へと入れられた。
甘酸っぱさが口中に広がって行く。
「ふふ、美味しいです」
「酸っぱくはないか」
「はい、ちょうど良い甘さです」
「どれ」
ぐっと肩をもたれ唇を奪われた。
「んっ!」
スルリと差し込まれた舌は私の口内を味わうように舐めて離れて行った。
「良い味だ」
ペロリと自身の下唇を舐めて、信長様は笑う。
「っ………!」
(手に持ってる蜜柑を食べればいいのでは?)
いつだって突然に口づけてくる信長様に慣れる事はなく、私の頬はすぐにじわじわと熱くなる。
「顔色が良くなったな。もっと食べよ」
(良くなったわけじゃなくて、照れてるんですっ!)
結局、信長様が手に持つ蜜柑全てを、私はあーんで食べ終えた。