第47章 来年の今頃は 〜お正月sp〜
「本当にすみません。せっかく持って来て頂いたのに」
「いや、気にするな。これは俺と吉法師とで食べる。吉法師、こっちへ来い」
信長様は縁側に来てそわそわと信長様を見ていた吉法師を手招きして呼んだ。
「ちちー」
信長様に呼ばれ、吉法師は嬉しそうに藁履を脱いで部屋の中へと入って来た。
(ふふっ、吉法師嬉しそう)
「ここに座れ。雪遊びで冷えたろう。粥で少し温まれ」
ポンっと信長様の膝を叩くと、吉法師は嬉しそうに信長様の膝の上に座った。
「かなり濡れておるな。これを食べたらまずは着替えよ。風邪をひく」
雪遊びでベタベタになった吉法師の頭を触り濡れた手を彼に見せた。
「やー、まだあそぶのー」
遊び足りない吉法師は信長様の膝の上でイヤイヤと頭を振る。
「着替えを先にせよ。その後に雪合戦をしてやる」
「ゆきがっせんっ!?」
きっとあまり分かってないだろうけど、楽しい事だと受け止めた吉法師は目をキラキラさせてお粥をパクっと口にした。
早く遊びたくて仕方のない吉法師は、はふっ、はふっと言いながらお粥をたくさん食べて着替えを済まし、寝落ちするまで信長様と雪合戦を楽しんだ。
「ふっ、怪獣も漸く力尽きたようだな」
小さな怪獣も大きな野獣には勝てず、深い眠りに落ちた吉法師を隣の部屋へと寝かせた信長様は再び私の横へと腰を下ろした。
「新年でお忙しいでしょうに、吉法師の面倒まで…ありがとうございます」
お正月から挨拶に来る大名や商人は沢山いて、今日だって忙しいはずなのに。
「貴様の体調が最優先だ。それに、腹の子のためとでも言わねば貴様は中々休もうとせんからな。医師も言っておっただろう。今が大事な時期で無理をするなと。何も気にせずゆったりと過ごせば良い」
大きな手が私の頬を包み、優しい眼差しが降り注ぐ。