第46章 夫婦の絆〜信長様誕生日sp〜
「!!」
私の体が傾くと同時に信長様の体も私にのしかかり船の重心が傾いた。
「空良っ!」
「信長様っ!!」
咄嗟に信長様が私を抱き寄せたけれども既に遅しで……
ざばーーーーーっん!!
私たちはそのまま湖の中へと投げ出され、一回転した船の一部が私の頭に当たった。
(いったっ、…………あっ、思い出したっ!私は…信長様の妻で吉法師の母……)
走馬灯の様に失われていた記憶がグルグルと頭の中を回り始める。
(こんな大切な事をどうして忘れていられたんだろうっ!)
早く信長様に会って謝りたいのに水の中で体が言う事を聞かない。
もがけばもがくほど苦しくなって体が重くなって来た時、
「空良 っ!」
沈みかけた所を信長様の腕に引っ張られ、岸まで泳ぎ着いた。
「空良、どこも怪我はないか?」
私の肩に手を当て信長様は心配そうに覗き込む。
「っ、大丈夫です。………信長様」
私はそんな信長様に触れるだけの口づけをした。
「………?」
不思議そうな顔。
「信長様に側室が五十人もいたなんて、全然知りませんでした」
「空良、貴様記憶が……」
「はい。思い出しました。私は信長様の唯一の妻だと思っていたのに、五十人もいたなんて驚きです」
信長様が意地悪で言った事は分かっている。だから私も少し意地悪を言い返したくなっただけ。
なのに、
「側室などおらん」
「え?」
「俺の側に生涯おくと決めたのは貴様だけだ。例え俺を忘れようとも貴様だけを愛し続ける」
てっきり意地悪を言い返されると思ったのに真剣な顔でそう言って私を抱きしめるから、
「……っ、ごめんなさい」
意地悪を言ってしまった事を後悔して、すぐに謝った。