第46章 夫婦の絆〜信長様誕生日sp〜
「あの、じゃあ聞きたい事があります」
「言ってみよ」
「私は信長様の正室だと聞きましたが、その…側室の方は何名おられるのでしょうか?その方達にも挨拶をした方がいいと思いまして…」
「………俺に側室がいると、なぜそう思う?」
船の櫂を漕ぐのをやめて、信長様は真剣な顔で私を見た。
「え?あの…、私の様な身分の者が正室だと言うだけでもおこがましいのですが、よく考えれば信長様はとても優しい方ですし、きっと側室がたくさんいらっしゃるのだと思いまして……、記憶を失ってきっとご迷惑をかけているのでご挨拶をと思いまして……」
「五十人だ」
「えっ?」
「俺の側室は五十人おる」
「ごっ、五十っ!そんなに……っ!」
(予想以上だ。一日では回りきれない…)
「あの…後でその方々の事を教えて下さい。時間がかかっても……んっ!」
話の途中なのに、急に頭を引き寄せられ口を塞がれた。
「んっ、」
「貴様の悪い癖はまだ抜けておらんのだな」
「っえ?…んぅっ!」
激しく呼吸を奪う様な口づけに、ある事を思い出す。
あ、これは、黙れの口づけだ……
どうしてこんな事を思い出すのか分からない。でもこの口づけをする時は信長様はいつだって寂しそうだった気がする。
「っ、………ん、」
キツく抱きしめられ噛みつかれるような口づけが続く。
(んっ、苦しい……私…そんなにも怒らせる事を言った?)
苦しいと信長様の胸を叩いて訴えても力を緩める気も唇を離してくれる気もないらしい。
「ん——————っ」
苦しくて、何とか離れようと腕を後ろに伸ばし船の縁を掴もうとした時、伸ばし過ぎた手は船の外に飛び出て空を描き、ぐらりと体が傾いた。