第46章 夫婦の絆〜信長様誕生日sp〜
「空良、ここへ来い」
褥に横たわった信長様は私に来いと手招きをした。
「っ、行けません」
(また胸を触られたら困るし殿方と同衾なんて…)
「強情だな。記憶を失ってもその強情さは健在か?」
ふっと笑って口元を緩める。
私の聞かされていた織田信長とは正反対の人物像に頭が追いつかない。
「私の事、怒ってないんですか?」
そんな質問がなぜか出た。
「なぜ怒る必要がある?」
「だって、あなたはすぐ怒って人を斬るのだと聞いて来ましたから。記憶を失くしたとは言えこんな私に怒ったのでは………ぁっ」
この質問をした事をすぐに後悔した。
柔らかな表情はそのままで、目の奥にチラリと寂しげな色が浮かんだから…
「その情報は何も間違ってはおらん。だが俺は貴様に怒ったことはあまりないと思うが、そんな記憶が少しでも貴様の中に残っておるのか?」
「えっと…分かりません。…でも、とても意地悪をされたような気がしています」
そう、甘くなるような意地悪をたくさん……
「ほぅ、どんな意地悪だ?」
真剣に話を聞いていた顔は途端に意地悪な笑みを浮かべて私の腕を掴み引き寄せた。
「あっ、何をっ!」
「貴様の声がか細くてよく聞こえぬ。もっと近くに来い」
「そ、そう言う所だと思います」
そう言う、言葉巧みにいつも私に意地悪をしなかっただろうか?
「どう言う所だ?」
「だから…んっ!」
長い指が掴んだ私の手の甲をくすぐる様に撫で、体がぞくりとして声が出た。
(っ!今の私の声っ!?)
自分の甘い声に驚きながらも質問したい事は山ほどあり、私は質問を続けた。
「私は、あなたを憎んでいたはずです。なのにどうして夫婦なんかに?」
顕如様に間違った事を教えられていた事は理解したけど、でもそこから夫婦になるなんて考えられないっ!
「簡単だ。俺が貴様を愛して、貴様が俺を愛したからだ」
「こっ、答えになっていません」
私があなたを……?そしてあなたも私を!?
その着物から覗く逞しい胸元に私が顔を埋めた事があるというの?
(ってやだ私…はしたない)
この人の纏う色香にやられてしまいそうなほど、ずっと向けられる熱い眼差しが苦しい。